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MDGs blog

【MDG2】マラウイ教育プロジェクトで学んだこと

財団法人国際開発センター 理事(調査研究・評価担当) 石田洋子さんから、MDG2 「すべての子どもたちに初等教育を普及させる」に関わる体験を語っていただきました。

長年開発途上国の現場で、人々の生活改善のためのプロジェクトに携わってきた石田さん。

現地で見たもの、感じたこと、そしてそこから見えてくる、MDG2達成のためのヒントとは。


 

マラウイ教育プロジェクトで学んだこと

マラウイの子どもたち.jpg

(マラウイの子どもたち)

私は現在、財団法人国際開発センターの評価事業部長を務めています。過去20年間、開発コンサルタントとして途上国で実施される国際協力機構(JICA)の開発援助プロジェクトや調査業務に携わってきました。私は参加型開発や評価を専門としており、教育、保健医療、水供給、農村や漁村開発など、さまざまな分野のプロジェクトでコミュニティの人々と開発援助プロジェクトの間をとりもつ役割を担ってきました。

一般的にあまり知られていませんが、JICAが行う日本の政府開発援助(ODA)を、JICAとの契約に基づいて途上国の現場で実施しているのが私たち開発コンサルタントです。

例えば、学校の先生や保護者、コミュニティの住民や女性たちとワークショップを行って彼らの問題を話し合ったり、その解決策を計画する手伝いをします。一緒に作成した計画に基づいて小さな額の資金を提供し女性たちの生計向上活動を支援したり、小学校の教室やトイレ建設、教科書配布などの学校改善活動を支援するなど、実際にその解決策を実施する手伝いもしてきました。さらに、これらの活動で得られた彼らの声をとりまとめて途上国の政府に伝えたり、JICAが計画する援助計画に反映させたりしています。

 

机や椅子が無くて床に座って授業を受ける子どもたち.JPGこれまで数多くの開発協力プロジェクトに関わってきましたが、中でも、アフリカ南部に位置するマラウイで行った教育分野の開発協力プロジェクトは、私にとって非常に印象に残るものでした。

このプロジェクトが私にとって初めてプロジェクト・リーダーを務めたプロジェクトであったこと、それまでアジアの国々での仕事が多かったことからアフリカの貧困地域の子どもたちがきびしい状況で生活している様子をこのプロジェクトではじめて身近に体験したこと、マラウイ政府の行政官や学校の先生、地域住民のみなさんが暖かくて親切で資源がないながらも教育現場をなんとか改善しようとがんばって一緒に努力して少しずつでも成果があげられたことなどが何といっても印象的でした。一方で、せっかく知り合いになれた人たちがある日突然亡くなってしまい大きなショックを受けたこと(多くの場合死因は明らかにされませんが、エイズが原因だと思います)も忘れることはできません。

 

  (机や椅子が無く、床に座って授業を受ける子どもたち)

 

マラウイは世界で最も貧しい国の一つです。一日の所得が1ドルに満たない人々の割合(絶対的貧困率)は全国民の53%に上ります。マラウイは天然資源に乏しく、主な産業は農業です。農業生産の多くは白人が所有するタバコや紅茶のプランテーションで生み出されています。マラウイ人たちはこうしたプランテーションで季節労働者として雇われます。零細農業を営んでいる人々は自給自足の生活を送るのが精いっぱいで、農産物を売って利益を得るような状況ではありません。こうした背景から経済は伸び悩んでいます。

 

マラウイ農村部の一般的住居.JPG

(マラウイ農村部の一般的住居)

 

マラウイでは、他のアフリカ諸国と同様にエイズの問題が深刻です。私が初めてマラウイを訪問したのは2000年8月でした。その時のマラウイの平均寿命は39歳で私は当時42歳。すでに私はマラウイの平均寿命を超えていたわけです。出生率が高くて乳幼児の人口が非常に多いこと、エイズや結核、マラリアなどの感染症などが原因で青年から壮年にかけての人口が異常に少ないことなどが平均寿命の低い原因と言われています。農村では働き手がエイズなどによって亡くなってしまうため女性や老人が農業を担って家族を支えていかなくてはなりません。両親が死んでしまった子どもたちは、引き取る親戚がいないとストリートチルドレンになってしまう可能性が高くなります。こうしたエイズなどの感染症の問題は、経済成長や社会開発に大きなマイナスの影響を与えています。

 

教室が不足する学校での屋外教室.jpg

(教室が不足する学校での屋外教室)

 

教育分野にもたくさんの問題があります。小学校の学費は無料ですが、村に小学校がなかったり、小学校はあっても十分な数の教室がなかったり、椅子や机がなかったり、トイレがなかったり、先生がいなかったり、教科書が足りなかったりとたくさんの問題を抱えています。教室がない学校では屋外で一日中勉強をしなくてはなりません。昼間でも40度近くになったり、風が強かったり、急に大雨が降ったりする屋外で勉強することは大変です。椅子や机がない教室では、子どもたちはコンクリートか土の上に直に座らなくてはなりません。冷たくて硬くいところに座って勉強することは幼い子どもにとってつらいことです。特に思春期を迎える女の子にとって衛生上もよくありません。

また、教科書が足りないので一冊の教科書を3人、4人で一緒に使うことはめずらしいことではありません。ひどい時には教科書がなく、先生の講義をきくしかないこともあります。もともと先生の数が少ないのに、エイズで亡くなってしまってさらに先生の数が減っています。これではせっかく小学校に入学しても学校が楽しくありません。成績もあがらず、小学校の最終学年の5年生を卒業できる子どもは入学した子どもの半分もいないのです。さらに、貧しくて子どもを学校に行かせることのできない家庭や、学校に行っても役に立たないから子どもを学校に行かせない親もいます。

マラウイ政府や、政府を支援するたくさんの援助機関は、こうした問題を解決して、できるだけ多くの子どもたちが小学校に通い卒業できるようにと様々な努力をしています。しかし、こうした問題は一度に解決できるわけではありません。さらに、政府や援助機関に頼るだけではなく、地域住民の理解や協力も必要です。

 

黒板や机、椅子はあるが壊れていることが多い.JPG

(黒板や机、椅子はあるが壊れていることが多い)

 

私が担当した教育プロジェクトでは、こうした地域レベルの教育改善活動を強化することを目的として、行政官や住民リーダーの研修や住民による活動支援を行いました。まずは、地方政府教育事務所の行政官がリーダーとなって、小学校の校長先生や教師、PTAの人達と一緒に学校の抱える問題点やその原因、自分たちの持っている資源などを検討して、問題を改善するための計画を立てました。次に、プロジェクトから少しの資金援助を提供して、地域の資源をできるだけ使ってマラウイの人たちの手で改善のための活動を実施しました。例えば、煉瓦を焼いて教室やトイレを作ったり、椅子や机を購入して自分たちで維持管理する仕組みを作ったり、子どもたちを学校へ送ることを親にアピールするキャンペーンを行ったり、教師に対する教授法のセミナーを開催したりする活動が、マラウイの人々によって企画され、実施されました。

これまで、政府が何もやってくれないと嘆きながら自分たちから行動を起こさず外からの支援を待つだけだった地域の人々は、自分たちで協力すれば学校を改善できることを実感しました。そして、自分たちの計画したように教室やトイレが実際に完成することで達成感を味わい自信をつけることができました。プロジェクトの資金援助がなくても、自分たちの力で煉瓦を焼いて新たに教室を作ったり、教員室を作ったり、あるいはプロジェクトからの支援金に住民の募金を合わせて一冊での多くの教科書を購入しようとしたり、様々な工夫や努力がみられるようになりました。そして、こうした住民の努力を教育の技術面から支援するマラウイの行政官にも、自分の役割を理解して、誇りと自信がみられるようになったのです。

 

改善活動を計画する住民たちの会合.JPG

(改善計画を検討する住民たちの会合)

 

マラウイの教育プロジェクトでは、たくさんの友達ができました。教育省でリーダー的な存在で、マラウイ側の先頭にたって我々のプロジェクトを進めてくれたオーガスティン、現在は教育省計画局長を務めて教育改善に尽力しています。トコ、グレース、マーティンなどの行政官も、今でも「あの教育プロジェクトで頑張ったことを思い出して、自分たちで頑張ろう」といいながら学校や住民に働きかけているそうです。

マラウイの教育にはまだまだ課題が山積しています。しかし、こうして行政官や学校、住民が協力しながら自分たちの子どものために努力することで、徐々にではあっても改善に向かっているものと信じています。そして援助機関やNGOは、彼らの依存心を高めるのではなく、こうした政府や住民の活動に対する側面支援をすることが求められます。

日本にいる私たちもマラウイの人達のこうした状況を理解し、応援していくことが重要です。彼らにとっても大きな支えになると思います。アフリカで起こっていることは遠くで自分たちには無関係のこととは思わないで、皆さんも、ぜひ同じ地球に住む仲間たちの努力に関心をもち応援をしてください。

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注:図中で県名を四角で囲まれている県は教育プロジェクトのパイロット県

図:マラウイ国地図および教育県区分


著者紹介
石田洋子(いしだ ようこ)

 

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一般財団法人国際開発センター 理事(調査研究・評価担当)

東京大学大学院新領域創成科学科より博士号(国際協力学)取得

日本評価学会理事。

東京大学、東京外国語大学等で非常勤講師を務め、現在、放送大学で面接授業講師を務める。

JICA技術協力「ネパール小学校運営改善支援プロジェクト」、「ネパール国モニタリング評価システム強化プロジェクト」、「マラウイ国全国地方教育計画策定支援計画」等のチームリーダーを務める。

「PCM手法の理論と活用」、「大学テキスト国際協力論」執筆に参加。編著書に「アフリカ政策市民白書」、「アフリカに見捨てられる日本」、「アフリカにおける貧困者と援助」等。