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MDGs blog

【MDG1】アフリカにおける飢餓問題とミレニアム開発目標(MDGs)

中部大学をはじめ、ウガンダにある、東アフリカ最古の大学であるマケレレ大学など、国内外の多くの大学で教鞭をとられ、日本のアフリカ研究の第一人者・吉田昌夫さんに、MDGs1「極度の貧困と飢餓の撲滅」についてご寄稿いただきました。

よく耳にする「飢餓」という言葉とはどのような意味なのか?
飢餓にもっとも苦しむのは誰なのか?
そしてそれはなぜなのか?

一面的な見方だけではとらえきれない飢餓の問題について、解説していただきました。


飢餓とは何か

飢餓とは主観的に見れば、生きていくのに必要な食べ物がなく、空腹で苦しい状態のことを指す。その状態が改善されないと、病気あるいは衰弱により身体状態が悪化し、最悪の場合は死に至る。また客観的な観察から見れば、食料の不足によって栄養不足、栄養失調が続き、体調の維持が困難になっている状態を指す。

 飢餓には、突発的なものと、慢性的なものとの両方がある。突発的なものは、通常の状態ではないような気候変動や気候不順が起り、あるいは武力紛争状態が始まり、そのために食料作物生産が激減して、農家も食料自給ができなくなる、食料流通が円滑におこなわれなくなる、あるいはその影響で食料価格が高騰し、所得がわずかしかない人びとは食料が買えなくなる、などで起る飢餓のことである。これに対し、慢性的なものは、人口増加に食料生産が追いつかず、購買力もないため食料購入もできず、食事の回数や1回あたりの食事の量を落さざるを得ない、栄養価の低い食事しか取らない、などの対応を行なっても、恒常的にカロリーや蛋白質の摂取量が正常な生活に必要な条件を充たさない状態が続くといった場合を指す。

 国連のミレニアム開発目標は、1990~92年平均を基準年として、2015年までに飢餓人口を半減させることをうたっている。国連による飢餓人口の定義は、「食事エネルギー摂取量が生存ぎりぎりの必要水準に満たない状態で生きている人びとの数」である。そしてこのような食事エネルギーと、必要な蛋白質、ビタミンその他の栄養素を、いついずこにおいても摂取することができるようにすることが、食料安全保障と呼ばれるようになった。

 

飢餓人口はアフリカでは増え続けている

FAO(国連食糧農業機関)の発表によると、世界の飢餓人口は2009年には10億2000万人に達しているという。飢餓人口は世界の地域別に見た場合、アジア・太平洋地域が最も多く、6億4200万人に上る。その大きな部分をインド一国が占めている。サハラ砂漠以南のアフリカの最近の飢餓人口はインド一国よりも多く、2億6500万を占め、膨大となっているだけでなく、世界で唯一絶対数が増加している地域である。サハラ以南アフリカの全人口は推定7億7000万人であるから、これは全人口の3分の1を超えているということである。

 FAOの最近の発表では、2010年の飢餓人口はこれより少し減って9億2500万人になったと推定されている。しかしそれでも1996年に世界食料会議で、世界の指導者たちが飢餓人口を半減するターゲットに合意した1996年の水準よりも高い。この数値を見ても、飢餓人口を約半数の4億人にするという世界食料会議の目標の達成は、非常に厳しい状況である。

 アフリカにおける食料危機は種々の問題が複合的に重なり合って発生している。それらは、最近の地球温暖化を一原因とする気候の極端な変動にみられるように、自然災害が農業生産に与える影響が大きいが、都市化による食料供給の変化や、輸出向け農産物生産への転換とその不振、輸入に頼る化学肥料の価格高騰、一部の国における内戦勃発と難民の発生、など「人的要因」による原因も大きい。食料生産の問題だけが食料安全保障を考える際のポイントではない。食料の保存、流通も大きな問題であることを忘れてはいけない。またアフリカの食事には実に様々なものがあり、その多様性を知ることも大切である。アフリカの東南部ではトウモロコシを主食とするところが大部分を占めるが伝統的な穀物であるソルガムやヒエ、テフなども地域によっては最重要である。マメ類も栄養摂取上重要である。西アフリカと東アフリカの沿岸多雨地方では、コメ食が特に都市部で急増している。またウガンダやルワンダなどの高地地域では料理用バナナが主食であり、西アフリカや、中央アフリカのコンゴなどではイモを主食とする食事が広く見られ、そこではキャッサバなどのイモ類が重要である。さらに食料問題について栄養を中心に考える時、副食が大きくかかわり、ミルク、肉、魚などを含めて考える必要が出てくるのである。

 

誰が飢えているのか

FAOの統計などでは、飢餓の規模を計るのに、一国単位の食料エネルギー摂取量(カロリー)を用いてきた。しかし一国単位の食料供給量を基に計るのでは、住民の間に所得格差や資産所有の有無など、がある場合には、誰が飢えているのかを知るためには適当な方法とはいえない。とくに都市化が進み、食料を自己生産せず購入に頼る人口が増えてくると、食料購入にあてる所得を向上させることが食料安全保障の大きな課題となってくる。MDGの第一目標として、飢餓人口の半減とともに、極度の貧困人口(1日1ドル以下で生活する人口)の半減をうたっているのは、このように所得とは食料を得る能力であるとして考えているからである。

 飢餓の問題は、一国単位の問題から、最近はもっと細かく、国の中の誰が飢餓に直面しているのか、という問題として、小地域、世帯、個人の単位で考えなければいけない、という認識が高まってきた。農村地域でも土地が小さく食料自給を出稼ぎで補う必要がある農家が増大しているが、都市化が進み、スラムが形成され、そこでは食料購入にあてることができる所得がほとんどないような人びとが急増している。この状況のなかで、世帯のなかでも食料を配分する時に後回しにされているのが女性や子どもたちである。十分な栄養をとれないので、病気にかかりやすく、貧乏のためによい医者にかかる費用もだせない。また最近のHIV/AIDSの蔓延などで、家族の中で所得の稼ぎ手を失い、母子家庭や、おばあさんと孫だけの家族という場合も増えている。このように食料安全保障の問題を考える際に、「誰が被害を受けているか」、という、人を特定した問題としてとらえる必要があるだろう。そしてその解決に向けた第一歩として、小地域での社会的連帯を強め、相互に助けあう組織を造り出して行くことが必要なのである。

 

 ムワンザ州農村の共同脱穀作業0002.jpg

(タンザニアのムワンザ州における農村の共同脱穀作業 2001年8月撮影)

 


著者紹介:

Picture of Masao Yoshida_trimmed.jpg吉田昌夫

1934年生まれ。 1961~91年アジア経済研究所研究員、1991~2002年中部大学国際関係学部教授、2002~02年ウガンダのマケレレ大学客員教授、2004~10年3月日本福祉大学大学院教授。(特活)アフリカ日本協議会員。

専攻はアフリカ現代史、農業経済・農村開発論。著書に、『アフリカ現代史II :東アフリカ』 山川出版社、2000年、

『東アフリカ社会経済論』 古今書院、1997年、など。