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【MDG7】**スタッフブログ** ペンギンとマラリア

mudefで行っているLove is Free Campaignのためにマラリアの調べものをしていた際に、国内の動物園・水族館にいるペンギンの約半分が、マラリアに感染していた、という数年前のブログ記事を見つけました。

2011年現在では、海外から持ち帰ってくる以外に国内でのマラリア感染がない日本で、ペンギンがマラリアに!?

 

ペンギンもマラリアに?

調べてみると、蚊を媒介動物とし血液寄生虫(住血胞子虫)と呼ばれるように血中に寄生する原虫が引き起こす、「鳥マラリア」という種類のマラリアでした。主に鳥類が感染し、ヒトへの感染はほとんどありません。野生の生息地では鳥マラリアはほとんどみられず、国内で野鳥などから蚊を介してペンギンたちへ感染したと見られているようです。

感染すると衰弱や貧血を起こし突然死することもあるこの鳥マラリア。実はハワイでは、この鳥マラリアによって全滅に追いやられたり、絶滅の危機に瀕している野鳥が増えています。 

 

ハワイの鳥マラリア

観光のイメージが強いハワイ島には、世界有数の豊かな自然が広がり、多くの固有種が生息しています。
太平洋のほぼ中心に位置し、周りの大陸から4,000~6,000kmも離れていることもあって、古くから独自の生態系が営まれてきました。

ハワイ固有の鳥としてよく知られているのはハワイミツスイ。その祖先は北アメリカ北部のハウスフィンチだと言われていますが、ハワイの環境に適応して花の蜜を主食にしたり、昆虫や種子を主食とするように進化し、それに伴いくちばしの形も食べるものに応じて変化したりすることで多くの独特の種が生まれました。加えて黒い羽毛や赤い羽毛をもつ種がいるなど、その多様性も特徴です。

ハワイでは、200年前には50種以上のハワイミツスイが存在していたことが知られています。しかしこのうちの半分近くが、人による乱獲や人が持ち込んだ外来種からの感染症等により絶滅してしまいました。そして現在ハワイに生息するハワイミツスイの多くの種も、絶滅危惧種としてリストに載っています。

●IUCNレッドリスト http://www.iucnredlist.org/
※国際的な自然保護機関であるIUCN(国際自然保護連合)で作成された、絶滅のおそれのある生物種の中から自然保護の優先順位を決定する手助けとなるリスト
(レッドリストについての日本語サイト→ http://www.iucn.jp/species/redlist.html)

ハワイミツスイを初めとするハワイ固有の野鳥たちを絶滅の危機に追いやっている最大の原因が、外来種とともに持ち込まれた鳥マラリアと考えられています。鳥マラリアは、普通の鳥にとってはさほど危険な病気ではありません。ほとんどの鳥は、この病気に対して抵抗力を持っており、感染しても数週間で快復します。しかし、ハワイミツスイ含むハワイの鳥は、この病気に対する抵抗力が弱く、発病して死に至る確率がぐっと高いのだそうです。その結果、鳥マラリアに抵抗力のある外来種が繁殖域を広げ、固有の鳥たちが倒れていく…。

 

ブタと蚊と鳥マラリアの関係

こんな面白い話もあります。ハワイで鳥マラリアが流行する原因の一旦を担っているのは、ブタだ、というものです。

ハワイのブタは、人が食用に持ち込んだものが野生化したのですが、天敵がいなかっために、森で大繁殖しました(ハワイでブタが大繁殖している、という話も私は初めて知ったのですが…)。

マラリアを媒介する蚊が発生するためには、水たまりが必要です。ハワイは火山島であるために水はけがよく、自然の状態では水たまりはあまり多くありません。あったとしても、ボウフラが成長するのに必要な温度や養分が含まれず、蚊の繁殖には適していませんでした。このボウフラを育てるための最適な場所を提供しているのがブタなのです。ハワイの森には、巨大シダ植物が多数生えています。これらのシダ植物は、内部にでんぷんを貯える性質があるのですが、ブタはこのでんぷんを目当てにこれらのシダ植物を押し倒し、内部を食べてしまいます。この内部を食べられた倒木がバケツのような役割を果たし、雨水が溜まりはじめます。そこに、ブタたちが食べ残したでんぷんが溶け出し養分となり、ボウフラの成長に最適の水たまりを作り出すようになりました。

このため、本来はほとんど見られなかった蚊が大量発生し、それに応じて鳥マラリアも流行する、という悪循環が見られるようになったのです。

 

人間から始まる…

人が持ち込んだ外来種によって鳥マラリアが入り込み、人が持ち込んだブタによってその鳥マラリアが流行する…。私たち人間が起こす行動の影響力というのは本当に大きいのだなと改めて実感しました。これはハワイだけでなく、全世界で言えることです。

今も平均して1日に約100種の動植物が絶滅していっていると言われており、その多くが人間のライフスタイルに大きく影響されています。一度絶滅したものは、人間の技術がいくら進歩しようとも、もう取り返しがつきません。そのために、国際的にも様々な取り組みがなされていますが、もっと世界的にも関心を高めていく必要があるなと感じました。

 


 

文責: 立花香澄