mudef - Music Design Foundation -

MDGs blog

【MDG7】**スタッフブログ** MOTTAINAI-マータイさんが教えてくれたこと-

「MOTTAINAI(もったいない)」というフレーズを世界に発信し環境保護を訴え続けたケニア人女性ワンガリ・マータイさんが亡くなった、というニュースは、日本のメディアでも大きく取り上げられました。

 

ワンガリ・マータイという女性

ワンガリ・マータイさんは1940年、ケニアの中部、ニエリの農家に生まれました。多くのアフリカ女性と同じように教育を受けられる環境ではなかったものの、、お兄さんが両親を説得してくれたおかげで学校に通うことができ、政府留学生にも選ばれました。

アメリカの大学院で修士号を取得した後、ドイツ留学を経て、71年にナイロビ大学で生物分析学の博士号を取得するなど、意欲的に学び続けました。

アフリカで女性が社会進出を果たすために必要なこと。それは教育を受けること。1960年はアフリカの年といわれ、多くの国が植民地からの独立を果たしました。それでも女性が男性と同等に社会で働いたり、政治活動に従事したりすることは非常に困難でした。伝統や宗教的な理由から、女性が家庭を出て社会活動をすることが制約されたり、学校に行くことも困難な場合があります。

マータイさんのケースは当時のアフリカの状況を考えると、非常に恵まれたスタートを切ったといえます。そしてこの時代、欧米諸国への留学を果たしたエリートが、母国の女性解放に果たした役割は非常に大きなものでもありました。

 

マータイさんの活動 

そんなマータイさんがアフリカの貧困や環境破壊に心を痛め、1977年に貧困層の女性たちと始めたのが、「グリーンベルト運動」という植林活動です。たった7本の木を植えることからスタートしたこの運動は、これまでにケニアをはじめとするアフリカ大陸全土で約4000万本もの木を植えてきました。政府の弾圧を受けながらも、運動にはこれまでに貧困に苦しむ女性を中心にのべ10万人が参加し、環境保全にとどまらず、植林を通じて貧困からの脱却、女性の地位向上、ケニア社会の民主化にも大きく寄与しています。

環境破壊と貧困は密接な関係があります。貧しい家庭では燃料としての薪を集めたり、少しでも生活の足しになればと農地を切り開くことで、環境破壊を望まずともおこなうことがあります。その結果土壌の栄養が失われ、ちょっとした雨でも洪水や土砂崩れを引き起こし、貧しい家庭をさらに貧困に追いやることもあります。

さらに貧困状況に陥ることで、もっとも影響を受けるのは女性や少女です。学校に通わず働いて少しでも家計を助けないといけない。そしてそのため無学なまま育つことで、貧困の輪から抜け出すことを困難にします。

環境保全が貧困の改善に重要なのはその点です。環境保全を通じて、人々の経済にも好影響を与えることが期待されるのです。

マータイさんは、2002年に国会議員に初当選。翌年には環境副大臣に任命されました。2004年には環境や人権に対する長年の貢献が評価され、環境分野で初めて、そしてアフリカ人女性としても初めて、ノーベル平和賞を受賞するに至りました。

 

「吐息の一つひとつ」まで

そうした活動を行ってきたマータイさんが、2005年の来日の際に感銘を受けたのが、「MOTTAINAI」。Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)という環境活動の3Rをたった一言で表せるだけでなく、かけがえのない地球資源に対するRespect(尊敬の念)が込められている言葉です。

「もったいない」って日本人は日常的に使う言葉ですよね。牛乳をこぼしてしまったり、お店で頼んだごはんを食べきれなかったり。小さいころから両親に使われ、自分でも使ってきた言葉ではあるけれど、マータイさんが「素晴らしい言葉だ」とおっしゃるまで深く意味を考えたことなどありませんでした。

日本語で「もったい」とは仏教用語の「物体(勿体)」のことで、物の本来あるべき姿、「本体」の意味を表します。「ない」はその否定語で、「もったいない」とは「その物本来の価値が生かされず、無駄になるのが惜しい」という嘆く気持ちを表しており、物を大切に扱いたいという積極的な思いも織り込まれているそうです。

日本の民族信仰と言われる神道においては、「散る桜の花びら」や、「吐息の一つひとつ」まで、森羅万象に対して命が宿っているという考え方がありました。その命を大切にしよう、慈しみ感謝しようという心根が「もったいない」という価値観の根底に流れていると考えられています。

マータイさんはこの美しい日本語を知り、環境を守る世界共通語「MOTTAINAI」として広めることを提唱し、活動し続けてきました。

 

「もったいない」の文化

そんなマータイさんは、世界中の多くの人々に惜しまれながら、2011年9月25日、卵巣がんで亡くなりました。

ケニアのキバキ大統領は、マータイさんの数々の功績を称え国葬とすることを発表、10月8日にナイロビ市内の公園で国葬が行われました。葬儀は、「木を使わないで」という遺言に従い、特製の棺に納められ火葬に付されました。最後まで、環境への配慮を忘れないマータイさんらしい葬儀となりました。

マータイさんは亡くなりましたが、MOTTAINAIの精神は世界中に引き継がれました。“もったいない”ということばを生み出だし、使い続つづけてきた日本人の一人として、すべてのものを慈しみ無駄にしない、環境にやさしい生活とは何か、考え続けなければならないと思いました。

 


 

文責: 立花香澄