【MDG2】 アフリカの学校事情 (Schools in Africa)
2012.02.06
アフリカの多くの国々で、すべての人が教育を受けられるようにとの取り組みが熱心に進められています。たとえば、ケニア、マラウイなど多くの国で、小学校に通う授業料を無料にしてきました。おかげで、学校に通うことのできる子どもの数は近年大幅に増えています。
各国初等教育就学率比較(1999-2006)
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|
ケニア |
マラウイ |
マリ |
||||||
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1999 |
2002 |
2006 |
1999 |
2002 |
2006 |
1999 |
2002 |
2006 |
総就学率※1 |
総計 |
93 |
92 |
106 |
137 |
133 |
119 |
59 |
69 |
95 |
男児 |
94 |
95 |
107 |
140 |
135 |
101 |
70 |
80 |
101 |
|
女児 |
91 |
90 |
104 |
134 |
131 |
89 |
49 |
59 |
89 |
|
純就学率 |
総計 |
63 |
62 |
75 |
98 |
- |
70 |
46 |
54 |
61 |
男児 |
63 |
62 |
75 |
99 |
- |
73 |
55 |
62 |
67 |
|
女児 |
64 |
63 |
76 |
97 |
- |
67 |
38 |
46 |
54 |
(UNESCO Institute for Statistics, 2006)
しかし、全国的には就学率が増加していても、地方ではまだまだ学校に通えている子どもが少ないという現状があります。ケニアの場合では、2006年の全国平均の純就学率は86.5%ですが、北東部地域では20.8%にすぎません。また、学校に通う子どもの数は、男女の性別によっても大きく異なります。先ほどのケニアの北東部地域でも、女児だけを見れば純就学率は16.5%と、さらに低い数字を示しています(Millennium Development Goals Status Report for Kenya, 2007 )。マリでは、学校に通っていて、かつ自分の年齢に合った学年の学級にいる男児が67%いるのに対し、女児は54%でしかないのです(UNESCO, 2006)。
※1 : 総就学率とは、学齢人口(国によって違いますが、日本の初等教育の場合、学齢人口は6歳~12歳です)に対し、どれだけの人数が学校に在籍しているかを示す数値です。この数値では、学校に在籍している人の年齢は関係なく、留年した子ども、本来学校に通うはずだった年齢を超えた人々も含みます。それに対して、純就学率は学齢人口に対し、その学齢の就学者の児童の割合を指します。この数値では、純粋にその学年として在籍するべき子どものうち、どれだけの数の子どもが学校に在籍できているのかを測ることができます。
女児が学校に通えないのには、様々な理由があります。宗教や、文化的理由から、女児が家を離れて学校に通うことが認められない場合もあります。また、水くみや薪拾いなど家事手伝いが女児の仕事と考えられているため、学校に通う時間がない場合もあります。近年では南部アフリカではエイズにより両親または片親を無くした子どもが、家族の面倒をみるために、学校に通うことをあきらめてしまうこともあります。
しかし一方で、子どもが学校に通うことができているからといって、すべての問題が解決するわけではありません。例えば、小学校の授業料を無料にした国の多くでは、これまでは授業料を払うことができなかったが、無料になったために学校に行けるようになった子どもたちが出てきました。しかし、子どもの数は増えているのに、校舎の数や教室の数を増やすことまでは手が回っていない国も多くあります。そのため、ひとつの教室に入りきらないほどの子どもがあふれてしまい、子どもに対してきめ細かいケアをしたり、わかりやすく、きちんと知識や考える力が身に着く授業をすることができなくなってしまっている学校が多くあります。
また、生徒の数が増えるのにともなって、教員の数がますます足りなくなっているという問題もあります。マラウイでは、先生一人あたり67人の子どもがいるという計算になります。ちなみに日本では先生一人当たりの子どもの数は18人です(UNESCO Institute for Statistics, 2008)。
初等教育における先生一人に対する生徒数(1999-2007)
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1999 |
2003 |
2007 |
日本 |
21 |
20 |
18 |
ケニア |
32 |
38 |
46 |
マラウイ |
- |
- |
67 |
マリ |
62 |
57 |
52 |
(UNESCO Institute for Statistics, 2009)
特にマラウイなどの国では、教員免許を持った教師の数は多くありません。研修などをきちんと受けずに教壇に立っているということになります。これでは子どもたちにわかりやすい授業をしたり、子どもたちの心や体の悩みにきちんと対応することは難しくなってしまいます。
このように学校に通っても学習の効果が上がらなかったりすると、保護者や子どもたちが学校に通う意味を見失ってしまうことがあります。それは子どもの退学率を上げる一因になります。たとえばケニアでは、貧困家庭出身の子どもの10人に9人が小学校を卒業することが出来ていません(UNICEF、2009)。他に子どもの退学率を上げる原因としては、特に貧困家庭では、子どもが家庭で家事の手伝いや病気の家族の世話をしなくてはならないこと、親が教育の重要性を認めておらず、学校に通うことができないという傾向が強いことなどがあります。一度退学してしまうと、子どもが学校に復帰することは難しく、再度学校に通うことができるようになる子どもは全体の6%しかいません(Millennium Development Goals Status Report for Kenya, 2007 )。
初等教育まで最終学年まで残る生徒の割合(%)(2000-2007)
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ケニア |
マラウイ |
マリ |
初等教育の最終学年まで学校に |
84 |
36 |
73 |
(UNICEF, 2008)
こうした現状を改善しようと、アフリカ各国の政府はそれぞれ戦略を立て、取り組みをすすめています。その国ごとに違いはありますが、
- 学校の設備の充実
- 教員の研修
- 男女間、地域間の教育格差の解消
- 障がいを持った子どもなど、特別な配慮が必要な子どもたちのための受け入れ体制作り
- HIV/AIDSへの対策
- 学校給食の普及
などへの取り組みが進められています。
国際機関や各国政府機関、NGOなどは連携してすすめる「万人のための教育(Education for All)」は、2015年までに世界中のすべての人たちが初等教育を受けられる、読み書きができるようになる環境を整えることを目標としています。その達成に向け、アフリカ各国政府も努力を続けています。