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【MDG7】**スタッフブログ** 空を飛ぶサイ

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こんな驚くような光景が、昨年末に話題になりました。映画でもCGでもなく、現実に行われているサイの救出方法です。

 

南アフリカで増え続けるサイの密猟

世界のサイの70%以上が生息する南アフリカ共和国では、密猟被害に遭うサイの数が2007年の13頭から、2011年には過去最多の448頭に急増したそうです。

主に被害にあっているのは、アフリカ大陸に生息するシロサイとクロサイ。

シロサイは密漁によって19世紀末に100頭以下にまでしたものの、保護が進められた結果、現在は2万頭まで回復し、その内1万8,800頭が南アフリカに生息しています。

他方、クロサイは20世紀後半の大規模な密猟によって激減し、IUCNのレッドリストでは、絶滅の危機がもっとも高いCR(近絶滅種)に指定されています。現在地球全体での生息数はわずかに4,800頭。しかし今でも密猟は跡を絶たず、2011年にも19頭が密漁の犠牲になっています。

その中で、比較的密猟が少なく、サイの主要な生息地となっていた南アフリカでの密猟がうなぎのぼりになっていることが、現在問題となっているのです。

 

国立公園で行われる密漁

南アフリカで密猟の犠牲となったサイの半数はクルーガー国立公園で密猟されたと言われています。この国立公園は南アフリカを代表する大規模な保護区の一つで、サイにとっても長年重要な生息地となってきた場所です。

世界規模の環境保護団体である世界自然保護基金(WWF)の南アフリカ支部によれば、こうしたサイの密猟は、国際的な犯罪組織によって行なわれているとされています。これが管理されていた保護区にまで脅威を及ぼしている点は、とても大きな問題です。

政府は、2010年には165件、2011年には232件の密猟を摘発。今年の2月には、2年前にサイの密猟容疑で逮捕されたモザンビーク人3人に対して、密猟と違法銃器所持で禁錮25年を言い渡しました。APF通信では、この禁錮25年という重い量刑は、密猟者に対する見せしめとなることを狙ったものだ、としています。

 

止まらない密漁とアジアの需要

しかし、密猟されるサイの数は増えており、問題も深刻さを増しています。背景にあるのはサイの「角」に対する需要です。

サイの角は、主にアジアを中心とする地域で古くから薬や強壮剤にされてきました。サイの角を漢方薬として珍重する中国では、経済の発展とともに密輸量も飛躍していると言われます。ベトナムでも、医学的な裏づけは無いにも関わらずサイの角がガンの治療に効くと信じられており、需要を高める一因となっています。野生生物の国際取引を規制する「ワシントン条約」でも、サイの激減と密猟の根源にはアジアの需要があることを認めており、違法な取引を厳しく規制するよう求めていますが、目覚ましい効果は上がっていません。

 

サイの保護

この状況からサイを守るべく、WWFでも、サイの角の取引に対する厳しい取締りの施行を求める一方、密猟が多発する地域で、保護区のレンジャーや捜査官のサポートを行なっています。

冒頭の「空を飛ぶサイ」は、その一環として行われている救出作業の1つなのです。

冗談のような話ですが、ロープで体重2トンに及ぶものもあるというサイの脚を結び、そのままヘリコプターで安全な場所まで移動させるというもの。作業は、輸送中にサイが暴れて自らを傷つけることのないよう麻酔で眠らせて、さらに目隠しもして慎重に行われます。

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アフリカの大自然の上空を、サイの巨体が逆さまに移動していく姿はなかなか圧巻です。

しかし、想像してみてください。意識を失っているとはいえ、足をくくられ逆さ吊りで運ばれる、私達より3倍も4倍もの体重を持つサイ…。それでも、移動が長距離になる場合はこのやり方のほうがトラックで運ぶよりもサイの負担が軽減されるのだとか。

サイへの負担はもちろん、手間も時間もお金もかかることは想像に難くありません。しかし、ここまでしなくてはサイを保護できない、という現実でもあります。

 

 

需要がある限り、密漁はなくなりません。現地での密猟対策の推進とともに、サイの角を消費する国での取引の取り締まりを強化していくことが求められています。

 


[参考]

●WWF HP :  http://www.wwf.or.jp/

●MAIL ONLINE :  http://www.dailymail.co.uk/news/article-2057192/South-African-rhino-herd-saved-poaching-death-air.html

 


 

文責:立花香澄