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【MDG2】**スタッフブログ** 日本の寺子屋とコンゴの補習授業校

江戸時代の日本が、驚くほど高い識字率を誇っていた、という話、ご存知ですか?

 

江戸時代の脅威の識字率

江戸時代の幕末期においては、武士はほぼ100%読み書きができ、庶民層でも男子で49~54%は読み書きができたというデータがあるそうです。

同時代のイギリス・ロンドンでは成人男性の識字率は30パーセント、フランス・パリでは10%に満たなかったことを考えると、驚異的な識字率です。

その背景には寺子屋の普及があったと考えられています。江戸における就学率は70~86%で、裏長屋に住む貧しい家の子でも寺子屋へ行かない子どもは男女ともほとんどいなかったという記録もあるそうです。

 

コンゴの寺子屋?

発展途上国と言われる国々において、識字率や就学率を上げることは長年の課題です。そんな中、コンゴ民主共和国(以下コンゴ)から、寺子屋ならぬ「補習授業校」が教育事情を改善する突破口になるかもしれない、というニュースがあがってきました。

赤道にまたがるコンゴは、アルジェリアに次いでアフリカ大陸で2番目に広い国です。非常に雨が多く、雷が地球上で最も多い国としても知られています。

アフリカ大陸の中で最も天然資源に恵まれた国にも関わらず、この豊かな資源を巡る紛争と30年以上に及んだ独裁政治によって国土は荒廃し、現在では世界最貧国の一つとなりました。人口の70%は、1日1ドル未満で暮らすいわゆる最貧困層と呼ばれる人々で構成されています。

そしてこうした貧困と国の財政難は、83.5%の子どもが学校に通うことができていないという深刻な状況を生んでいます。


コンゴでは、初等教育6年、中等教育(日本でいう中学、高校)6年が義務教育ですが、就学率は20%弱…これは、世界でも指折りの低さとなっています。たくさんの理由が考えられますが、公立学校であっても、教師の給与や施設費など、ほとんどすべての学校経費が親の負担となっていることは、就学率の悪さの大きな要因と言えます。

 

コンゴ政府の取り組み

こうした問題を受けて、コンゴ政府は、無償で小学校教育と職業訓練を提供する補習授業校を全国に開設しました。

この補習授業校の対象となるのは、何らかの事情で学校を離れ小学校を卒業できていない9歳から11歳の子どもたち。3ヶ月間の特別訓練を受けた教師の下に、加速学習を取り入れ実施されています。

※加速学習とは、たくさんの学ぶべきものの中から、それぞれの子どもにあったやり方で、必要な情報だけを選び、確実に使える知識にしていくやり方のこと。例えば文章が好きで、文字を読むことで理解が深まる子や、絵を見て覚えることが得意な子など、それぞれの個性に合わせて教えることで、より短時間での学習を可能にしています。

これまでに840の補習授業校が開設され、約2万人の生徒が小学校の卒業試験に合格しました。今後は農村部での開設を進め、都市部との教育格差を減らしていくことを目指しています。

 

明るい成果

日本における寺子屋は、国の管轄ではなく、私設の塾のようなものでした。しかし家の手伝いの合間に通える距離にあったこと、お金は親が払える金額を払う形だったこと、少人数・個別指導が基本だったことなどにより、高い就学率を誇っていたと考えられています。

発展途上国において子どもたちが学校へ通えなくなる理由はたくさんありますが、日本の寺子屋にも共通する大きないくつかの要因をカバーできるのがこの「補習授業校」の施策と言えます。

子どもが歩いて通える距離に学校ができること、家庭に学校へ通えるほどの金銭的余裕がなくても受け入れてくれること、労働力として期待されているため通える日数が限られていても、授業についていけなくならないよう配慮されていること。これらが改善されることでこれだけ成果が上がる、というのは、とても明るいニュースですね。

 


 

文責:立花香澄