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MDGs blog

【MDG8】**スタッフブログ** 小さな島国が今直面する危機

ミレニアム開発目標の達成期限は2015年と間もなくです。あらためて8つの目標を確認してみたところ、ゴール8の中に、普段あまり見慣れない熟語が出ていました。

ゴール8は「世界の一員として、先進国も責任を果たそう」。
そのターゲットのひとつとして、「内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む」と掲げられています。
 

小島嶼開発途上国

「小島嶼開発途上国」とは・・・、と疑問に思い、調べてみました。

「小島嶼」は「しょうとうしょ」と読み、英語ではSmall Islands、小さな島々を意味するそうです。
「小島嶼開発途上国」は英語で"Small Island Developing States" と表記され、SIDSと省略表記されています。

国連が公表しているSIDSリストには、太平洋、カリブ、アフリカ地域等の38か国(国連加盟国)及び複数の非国連加盟国・地域が含まれています。アジアでは東ティモールやモルディブ、オセアニアではキリバス・ツバル・フィジーなど、アフリカではモーリシャスなどが名を連ねます。

これらの国々は、地球温暖化による気候変動や海面上昇の被害を受けやすく、島国であるがゆえの問題により持続可能な開発が困難とされています。そのためにミレニアム開発目標でもその特別なニーズに先進国が取り組むことがあげられているわけですね。

そんな「小島嶼開発途上国」について、先日のニュースでも取り上げられたキリバスの問題を通じて考えてみたいと思います。
 

キリバス共和国の危機

キリバス共和国(Republic of Kiribati)の人口はおよそ10万人。太平洋に浮かぶ国の面積は日本の対馬とほぼ同じ。バナバ・ギルバート諸島・フェニックス諸島・ライン諸島という4つの島・諸島からなり、住民の多くは首都タラワのあるギルバート諸島に住んでいます。人口の半数が貧困層にあたります。

kiribati.gif

かつては、バナバでは、肥料生産のための原料として世界中で取引されていたリン鉱石が豊富に産出されていました。しかし現在では枯渇してしまい、商業的に成立している資源はありません。現在の主要産業は農業。島々の土地は痩せていてカルシウムを含んでおり、コプラ(椰子の実の胚乳を乾燥したもの)栽培以外の大規模農業を行うのは難しい場所です。このコプラが主な輸出品ですが、貿易は、輸出額が729万オーストラリア・ドルに対して、輸入額は7501万オーストラリア・ドル(2001年)と、大きな貿易赤字を抱えています。そのため外国からの財政支援に頼らざるを得ない状況です。

こうした後発開発途上国としての様々な問題に加え、地球温暖化がもたらす影響がキリバスを危機に追い込んでいます。

キリバス周辺の海面は過去20年間、毎年数ミリずつ上昇しているそうです。キリバスの島々の平均海抜はたった2メートル。海面上昇のもたらす影響は計り知れません。世界銀行は、タラワのある島の5~8割が2050年までに浸水する恐れがあると警告しています。

そのキリバスに対し、フィジー共和国のナイラティカウ大統領が、救済の意を表明したことが先日ニュースになりました。ナイラティカウ大統領は、地球温暖化による海面上昇でキリバスが実際に水没の危機に瀕した場合には、全住民を受け入れる用意があり「困っている隣人にわれわれが背を向けることはない」と述べたと報道されました。

しかしそのフィジーも「小島嶼開発途上国」のひとつなのです。人口は約86万人。うち1日1ドル以下で暮らす貧困層が40%を占めます(2008年データ)。

キリバス、フィジーともにオーストラリア、ニュージーランド、日本が主な援助を行っています。今後は、こうした小島嶼開発途上国への開発援助とともに、気候変動による海面上昇により国を追われる人たちに対し、日本をはじめ先進国がどのような問題解決と援助を講じるべきか積極的に考えていくことが大切と言えそうです。