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MDGs blog

**事務局長ブログ** MDGs最終報告 世界の行方

7月6日、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、「ミレニアム開発目標(MDGs)報告2015」を発表した。

国連事務総長はNYでの記者会見で、「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくせるところまで来た」として、「MDGsは今後の持続可能な開発目標への踏み切りになるだろう」と述べた。

今から15年前、世界中でミレニアム(千年紀)を祝うイベントが開催されたことは記憶に新しい。そのミレニアム景気の中で、開発の分野で大きな「事件」があった。9月の国連総会で、世界中の首脳が貧困削減のための幅広いビジョンを定めたのだ。8つの分野で定められた合計21の目標は、ミレニアム開発目標(MDGs)として、2015年と定めた期限まで、国際的な開発の枠組みとして、世界各地で貧困対策が実施されてきた。

報告書によれば、途上国で1日1.25ドル未満で生活する極度の貧困層の割合は、1990年の47%(19億2600万人)から、2015年には14%(8億3600万人)にまで減る見通しとなった。また、開発途上地域における栄養不良の人々の割合は、1990年からほぼ半分に減少した。こうした成果は、「MDGsは歴史上最も成功した貧困撲滅運動」と事務総長が批評する所以でもある。

教育の分野でも、小学校の就学率が1990年の80%から2015年には91%にまで達するなど、「初等教育の完全履修」に向けた前進が見られた。

史上最も成功した貧困撲滅の取り組みは確かに各分野で成功をおさめたとも言えるだろう。

mudefが関連する分野でもある6つ目の分野である感染症については、2000年から2015年の間に、620万人以上の人々がマラリアによる死から助かったと推定されている。その多くが、サハラ以南のアフリカに住む5歳未満の子どもたちだ。特に2004年から2014年までの間に、9億以上もの殺虫剤処理された蚊帳が、マラリアが風土病となっているサハラ以南アフリカの国々に集中的に配布されたことも、マラリア患者数の減少に一役買っていることも指摘されている。

また環境の分野でも海洋漁業資源の乱獲は、生物学的利用限界内の資源割合の減少へ導いた。1974年の90%から、2011年は71%へと減少しているなど、今なお未達成な課題は多い。

MDGs最終報告書を見ると多くの課題が達成するめどが見えているものの、今なお既存の課題を抱えているままだ。例えば女性への差別、社会進出への妨げが今なお残る結果として、女性の貧困は男性のそれに比べると深刻である。貧困家庭に育つ子どもは富裕層の家庭の子どもに比べて教育を受ける機会が極めて低い。その結果就業のチャンスを奪われたり、衛生面での差別を受ける可能性も高い。貧困の負のスパイラルは、子どもの将来を、こうなりたい未来を奪っていく。

報告書で指摘される世界人口の4割に影響を与えている水不足も、とりわけ貧困層に影響を与えている。水が有料化されたり、飲料メーカーに買い占められることで不利益を被るのはとりわけ貧困層だ。第二次世界大戦後最悪を記録しているのは紛争により故郷を追われた人々。約6000万人という数は、毎日42000人が避難を余儀なくされているという計算だ。そしてその多くの国が、高い貧困率を示している。

世界全体を概観すると一部で世界は良くなったのかもしれないが、既存の課題はより一層厳しい状況に追い込まれていることが見えてくる。

最終報告書を発表した今、国連では「ポスト2015」に向けた開発目標の最終決定に向けて動き始めた。MDGsに引き続き「貧困撲滅」に加えて、鍵となるのは「持続可能な開発」。環境やインフラ開発なども含め計17分野で169項目の目標が盛り込まれる見通しだ。

数値の上だけであれば世界は確実に前進している。他方でその前進から取り残された人もいるということ。ポストMDGsは、途上国だけではなく先進国も対象とした目標が取り込まれる。貧富の格差が世界中で進む現在、取り残された人へ今後どう焦点を当てるのか、貧困のスパイラルに組み込まれた子どもや女性をどう救っていくのか、そして今なお進む環境破壊を前にどう対応していけるのか、私たちの未来は課題を多く抱えている。

mudefでは引き続き、世界の問題に目を向け、自分たちが何ができるのか、考えていきたいと思う。

 

文責:長島美紀(mudef事務局長)

図の引用は国連広報センターより