**スタッフブログ**戦争と子ども
2015.08.13
今年は、戦後70年。
安保法制の議論も重なり、例年以上に「戦争」について学んだり考えたりする機会が多いように感じます。
子どもの頃、私はこの時期が苦手でした。
戦争が怖かったからです。
夏休み前には戦争を体験した方々の話を聞く授業があり、夏休みに入ってからも戦争を題材にしたドラマやアニメを頻繁に見ました。
戦争を語って下さった方も、アニメのモデルも、戦争時はみんな子ども。
空から爆弾が降ってきた、兵士として戦った、親を亡くした…
幼い私はそれが自分と重なるようで、怖くて怖くて、とても受け止めきれませんでした。
その戦争を実際に生きた子どもたちは、どれほど恐ろしい思いをしたのでしょうか。
今も戦時下で生きる子ども
日本の戦争は70年前に終わりましたが、世界各地では今も紛争が続いています。
世界大戦後、紛争の端緒や大義は変化したと言われています。紛争というと一般には第二次世界大戦の様な総力戦を思い浮かべるかもしれませんが、冷戦後は総力戦ではない、局所的で小規模なスタイルの紛争が世界各地で頻発しています。
時にはテロの様相を呈する、この「低強度紛争」では、しばしば民間人も攻撃の対象となることから、子どもや女性、高齢者などの民間人が犠牲になる可能性も多くなりがちです。
国連児童基金(UNICEF)の発表によると、去年1年間に1500万人の子どもが紛争に巻き込まれ、紛争地帯で生活する子どもは2億3000万人に上っています。
紛争により、多くの子どもたちがけがをし、命を奪われています。地域によっては、子どもが兵士として徴用されたり、性奴隷として扱われたりと、想像を絶する境遇に置かれています。
UNICEFのアンソニー・レーク事務局長も、「これほどまでに多くの子どもたちが、言葉にできないほど残忍な行為の対象となったことは、最近の記憶にはありません」と述べています。
紛争が子どもにもたらすのは、直接的な被害だけではありません。
紛争で親を失えば、極度の貧困に陥ることが考えられます。
家を破壊され住む場所を追い出されれば、衛生環境が悪化する危険性が高まります。
食べ物が手に入らず、体力が落ちて様々な病気にかかるようになるかもしれません。
その状況で、教育の機会が与えられる可能性は低いはずです。
貧困、衛生環境の悪化、飢え、病気、教育機会の剥奪。
ミレニアム開発目標に示されるような、世界規模での解決が求められている課題を引きおこす原因の一つが、紛争なのです。
さらに、心の傷はとても深刻です。
難民キャンプや被災した地域では、子どもたちの遊びの場や機会が失われています。
親たちもこれまでの生活基盤が失われるために、精神的息抜きができる状況では当然なく、子どもたちに配慮する時間的・心理的なゆとりもないのが実情です。
中には無気力からアルコールに依存したり家庭内暴力に走るケースもあります。
そのため、紛争地に暮らす子どもたちの間には、不眠に悩む、悪夢を見る、無気力、乱暴な行動など、様々な心的ストレスによる症状が見られることが報告されています。
多感な時期に親や兄弟が殺される現場を目撃する、自分が兵士として人を殺す、そんな経験をさせられた子どもたちが、心にどれほどの傷を負うのか。
考えただけでも、いたたまれない気持ちになります。
戦後70年に思うこと
私は70年前の戦争を語る方々の強さに、いつも心打たれます。
戦争の経験者が高齢化することで語り継ぐ人が減っていく中、記録を残すためにと、嫌な記憶を追体験しながら話をして下さる姿を見るたびに、頭が下がる思いです。
しかし、その方々でさえ、「けがの跡が消えない」、「サイレンの音を聞くたびに今でも恐怖に襲われる」と口々に語ります。
70年経っても、体や心の傷が完全に癒えることはないのだと。
今、紛争に巻き込まれている子どもたちは、この先何十年と紛争による傷と記憶に苦しめられながら生きていくことになるのです。
そして、紛争が続けば続くほど、そういった子どもたちは増えていきます。
そんな世界のままでいいはずがありません。
「戦争は絶対にしてはいけない」と語る方々の言葉を正面から受け止めて、紛争に苦しむ子どもたちのために自分のできる形で少しでも貢献する、私は戦後70年目をそんな年にしたいと思っています。
みなさんはこの節目の年に、どんなことを考えますか。
参考HP:日本ユニセフ協会「武力紛争と子どもたち」