**スタッフブログ**動物園の歴史
2015.08.24
先日、夜の上野動物園に遊びに行きました。
十数年ぶりの動物園でしたが、夜行性のオオカミが動き回り、カンガルーの光る目に見つめられ、冒険心をくすぐられる雰囲気を満喫することができました。
そして、夜にも関わらず、夏休み中の子どもや仕事帰りの大人たちで大盛況。
改めて動物園は人気のスポットなのだと実感しました。
みなさんはこの動物園がいつ誕生したかご存知ですか?
動物園史
はるか昔、人間が生活の基盤を狩猟から農耕へ変え、次第に出来上がる集落の中で、権力者が生まれるようになりました。そして、権力者たちが自分の財力を示すために、珍しい野生の動物のコレクションを始めたのが、動物園の起源だと言われています。
紀元前2200年ごろには、すでにメソポタミア文明の王たちが、ライオンやゾウなどの大型動物の収集に熱心だったとか。
時代が進んでも、ヨーロッパのローマ帝国や歴代王朝の王や権力者たちは、莫大な資金を費やして、世界中から珍しい動物を集め続けました。中世ヨーロッパでは、集めた動物を観賞するために大規模な施設が作られました。
これが、現在の動物園の原型である「メナジェリー」と呼ばれる施設です。
権力者にとって、動物のコレクションは娯楽や富の象徴のほかに、別の大切な意味を持っていたとされています。それは、「動物を、さらには動物の住む自然をもコントロールできる」ことを広く世に知らしめるということ。
動物は、権力者の支配力を誇示する道具の1つとして扱われていたのです。
その後、18世紀になり、フランス革命後にパリに世界初の近代動物園が誕生します。
この動物園が「近代的」と言われた理由は、施設に教育や研究の場としての役割を持たせたことにあります。国の威信など様々な思惑もあったようですが、動物園が市民の環境教育という場として公開されたり、動物の生態を研究する施設として設立されたりしたのは、動物園の長い歴史上、初めてのことでした。
この頃になると動物に関する研究も進み、コンセプトも展示方法も現在の動物園に近いものになっていきます。
日本の動物園は
日本初の動物園は、1882年に博物館に付随する形で上野に設立されました。現在の上野動物園の前身です。
当時は、動物商と呼ばれる職業の人たちが海外から動物を仕入れ、それを動物園が買い取って展示していました。しかし、日本には大型の動物を飼育するノウハウがなく、たくさんの動物が劣悪な環境の中で死んでいきました。
また、日本の動物園の歴史の中で、戦争の悲劇は避けて通れません。
中でも絵本や映画にもなった上野動物園のゾウの話は有名です。動物園では、空爆によって檻が破壊されることを懸念し、多くの動物が殺処分されました。大人気だった3頭のゾウも例外ではなく、何とか生き延びさせようという動きもありましたが、結果的に3頭とも餓死。動物園からゾウはいなくなりました。
戦後、上野動物園はこの経験から「Zoo is the Peace」を合言葉に、復興を遂げていきます。
現在の動物園の役割
動物園という施設は、動物の権利を守るという観点から、動物を檻に入れて飼育する動物園の存在そのものに対し、批判の声もあります。高村光太郎の詩「ぼろぼろな駝鳥」はその典型でしょう。「人間よ、もう止せ こんな事は」という高村光太郎のメッセージは、檻に閉じ込められ行動を制約される動物を憐れむ声としてしばしば引用されています。
ただ、動物園が何もしていないわけではありません。
例えば、施設を改修してなるべく野生に近い状態で動物を飼育し、動物にストレスをかけず、訪れた人たちに動物の住む環境も含めて学んでもらうという2つの利点を生み出している施設もあります。
さらに、現代の動物園は、絶滅が危惧されている動物を保護し、その種を保存するために非常に大切な役割も担っています。
(詳しくはSATOYAMA BASKETで紹介しています。http://satoyamabasket.net/contents/cmenu-79.html)
現代の動物園は、動物の魅力に触れ、人と動物をつなぐ場所として、日々試行錯誤を続けているのです。