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MDGs blog

【MDG6】 アフリカとマラリア

マラリアと貧困

先進国ではほぼ撲滅されたマラリアですが、アフリカでは貧困や財政難のために十分な対策がとれません。さらに、マラリアに罹患することにより、就業や教育の機会を失うことで貧困から脱却できない という悪循環に苦しんでいます。

マラリアは、貧困の結果として見られることが多いのですが、同時に、貧困の大きな原因となっています。ある推定によれば、アフリカは、マラリアによって毎年120億米ドル分(1.2兆円)のGDPを損失していると推定されています。WHOは、特にマラリアの発生率が高い国では、毎年1.3%の経済成長を阻害していると推定しています。

働き手の若い男性が、マラリアによって十分に収入を確保できない場合、その家族は貧困で苦しめられることになります。また、マラリアで苦しむ家族は、限られた収入の多くを治療に費やさなければならず、貧困から抜け出ることが困難になります。

更に、マラリアに感染した子どもは学校を欠席がちとなり、教育を受けることが妨げられています。マラリア予防には、政府や援助団体による公衆衛生上の取り組みや、全国レベルでの保険戦略が不可欠ですが、開発途上国では、そのための十分な予算がない場合もあります。

その結果、貧困が次の世代に引き継がれてしまうことも多くなります。従って、貧困削減の観点からも、マラリア対策が重要だと言えるでしょう。

WHO
平野祐二訳「子どもと健康の世界地図-劣悪な環境におかれた子どもたち」(丸善、2008年)


国際社会の動き

ロールバック・マラリア(Roll Back Malaria、1998年)

1998年5月、世界保健期間(WHO)による、プロジェクトとして宣言されたマラリア対策(マラリア撃退作戦)。現在、ユニセフ、UNDP(国連開発計画)、世界銀行も参加しています。ロールバック・マラリアの特徴は、2010年までにマラリアによる死亡率および有病率を半減させ、2015年までにさらにそれぞれを半減させるという、具体的数値目標を持った対策案であること。


具体的には、マラリアサミット(1992年)で起草されたグローバル・マラリア・コントロール戦略を応用する形で、具体的に4項目を基盤として進展しました。
(1)マラリア患者の早期診断と迅速な治療
(2)突発性流行の検出と対策
(3)薬剤含浸蚊帳(insecticide-treated nets: ITNs)を用いた媒介蚊対策
(4)妊婦のマラリアの予防
 

さらに、流行国と多くの国際機関との連携、開発支援2国間援助の推進、研究グループとの協力、製薬会社やNGO、財団、マスメディア、世界基金との「パートナーシップ」を築く重要性が謳われています。
2000年には、アフリカのナイジェリアで、アフリカの44カ国の代表が参加してロールバック・マラリアに関するアフリカ・サミットが開催されました。2010年までにアフリカにおけるマラリアによる死亡率を半減させるための『アブジャ宣言』を採択しました。マラリア対策の具体的な内容としては、特に治療と予防に重点が置かれています。
日本では、住友化学が独自技術により開発した長期残効型防虫蚊帳(Long-Lasting Insecticidal Net; LLINs)と呼ばれる、定期的に殺虫剤で再処理しなくても、高い殺虫効果が数年にわたって持続する、オリセット®ネットが開発されました。住友化学はアフリカでのロールバック・マラリア・キャンペーンに参加、「オリセット®ネット」の供給と、現地会社へ技術の無償供与を行っています。

ロールバック・マラリアについてはこちら
オリセット®ネットについてはこちら

 

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals、2000年)

12000年の国連総会で『国連ミレニアム宣言』が採択、1990年代の国際開発目標と収斂する形で、「ミレニアム開発目標」が設定されました。
そこでは、「2015年までに5歳未満児の死亡率を3分の2減少させる」、「マラリアおよびその他の主要な疾病の発生を2015年までに阻止し、その後、発症率を下げる」といった、マラリアに関連した目標が掲げられました。

ミレニアム開発目標についてはこちら

 

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria、2002年)

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)は、途上国における、エイズ、結核、マラリアという世界三大疾病対策の実施に必要な資金を提供する機関として、スイスに設立されました。 2002年の発足から、これまでに世界140カ国の580のプロジェクトに対して資金提供を行ってきました。これまでに350万人の命が救われたと推計されています。
2009年3月現在、世界基金に寄せられた寄付は約129億ドルに上ります。

世界基金についてはこちら

 

予防対策のために

ベトナムでは1991 年、殺虫剤処理済みの蚊帳や家庭用スプレー剤、抗マラリア薬の配給など、マラリア対策が国家的優先課題として実施されるようになってから、マラリア患者数が劇的に減少しました。
エリトリアでは、2000 年から2006 年にかけて100 万張以上の蚊帳が配給され、2004 年にはすでに、マラリア感染の危険性が高い地区に暮らす世帯の約80%に蚊帳が普及した結果、マラリアの患者数とマラリアによる死者数は記録上、2000 年から2006 年までに70%以上減少しました。
ベトナムやエリトリアの事例をみるように、マラリアについては、国を挙げての大規模な予防プログラムを展開し、より効果の高い抗マラリア薬の普及を進めれば、マラリア患者とマラリアによる死者を大幅に減らせると考えられています。

参考 : 国連「国連ミレニアム開発目標2008」(2008年)