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【MDG3】**スタッフブログ** 難民キャンプの教育とジェンダー

小学生の時、学校の名簿は男子が先、女子が後であることは当たり前で、特に疑問を持ったこともありませんでした。それがある年に、突然男女混合になったので、「なんで?」と驚いた記憶があります。

1999年に制定された男女共同参画基本法を受けて、男女混合名簿が小学校でも導入されたことを知ったのは、大人になってから。

でも、男子を「くん」付け、女子を「さん」付けで呼んでいたのが、「さん」で統一されり、ランドセルも男子が黒で女子が赤という決まり事がなくなったりしたのもこの頃でした。

 

公教育の場におけるジェンダー問題は、様々な形で論争が起きがちなもの。途上国においてはこのジェンダー問題はより顕著に表れます。

 

難民キャンプって?

「難民キャンプ」という言葉を聞いたことがありますか?紛争や人権侵害、その他迫害を受けたことでやむを得ずに母国を逃れた、「難民」と呼ばれる人々が暮らす居住地域です。

2010年末時点で、国連は世界各地に1,540万人の難民が存在すると推定しています。

難民キャンプは国や地域、気候条件や政情などにより、様々です。難民支援を行う国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)やNGOなどによる支援を受けて、最低限のインフラ整備などが済んだ状態で難民を受けいれるキャンプもあれば、自然発生的に作り上げられ外からの援助が不十分ではないキャンプもあります。

 

世界最大の難民キャンプ

pic_africa_somalia_01.jpg世界で一番大きな難民キャンプは、mudefがサポートするマゴソスクールがある、ケニアの「ダダーブ難民キャンプ」です。ダダーブ難民キャンプは、ソマリア内戦から逃れてくる難民を受け入れるため、1992年にケニアのソマリア国境近くに設立されました。

建設時に9万人を想定して設営されたこの難民キャンプには、現在そのキャパシティをはるかに超える約45万人が生活しています。終わりの見えない紛争に加え、2011年の過去60年で最悪と言われた干ばつによる飢饉に直面しているソマリアでは、全人口の3分の1が故郷を離れざるを得ない状況で、その数は加速し続けています。

45万人といえば、日本でいうと石川県金沢市の全人口に匹敵します。もはやキャンプというよりも、町というべきでしょう。

 

難民キャンプでの教育

難民キャンプというと、飢餓に瀕した子どもや、不衛生な環境で密集して暮らす人々、という先入観を持っていた私。しかし難民キャンプとはいえ、危機的状況が過ぎ、支援が届き始めれば徐々に最低限のインフラが整っていきます。ダダーブ難民キャンプのように、長期間運営されている難民キャンプでは、開設後3か月が経つと、子どもが勉強できる学校が設立されるようになります。

難民にとって、一定レベルの教育を受けることは、将来難民が自立した生活を営むために重要で、国際機関やNGOも重点的に取り組む活動でもあります。ダダーブ難民キャンプには小学校が19校、中学校が6校設立されているのだとか。

同キャンプで暮らす学齢児童の数は約15万6000人。しかし彼らの就学率はきわめて悪いのが現状です。特に家事手伝いや文化的・宗教的理由で学校に行けない女子生徒の進学率は38%にすぎません。

女子の就学率が低い原因としては、家庭での労働力として期待されていることや、学校と家が遠く離れているために通えなかったり、また移動中の安全上の問題が挙げられます。また、学校のトイレが男女別に配慮されていないなど、ジェンダーに配慮されていないために適齢期になった女子生徒が通学することを嫌がるようになることも指摘されています。

さらに、伝統的・宗教上の理由から「女性は家庭にいるべき」といった考え方が、通学を困難にしています。

若年結婚も教育を阻害する原因です。10代前半で結婚することで、学校に通うことができず、家事労働に縛られることにつながっているのです。その結果教育を十分に受けないまま子どもを産むことで、感染症予防などに関する知識がないために、死なせなくてもよい病気でわが子の命を落とす危険も深刻です。

 

ユニセフでは、「子どもにやさしい学校」づくりを提唱しています(MDGsブログ「子どもにやさしい学校とは」参照)。この取り組みは難民キャンプに限らず、すべての学校の現場で適用されるべき指標です。

 

教育のジェンダー格差

MDG(ミレニアム開発目標)では、すべての教育レベルにおける男女格差の解消が謳われていますが、難民キャンプに限らず、まだまだ文化的にも制度的にも、浸透していないのが現実です。

わたしたちが小学校の時に感じたような男女平等施策に関する違和感は、それを受け入れるのかあるいは拒絶するかで、ジェンダーに対する意識は大きく異なります。教育の普及では、このジェンダーの問題も同時並行で考えていく必要があります。

 


[参考]

・Integrated Regional Information Networks HP : http://www.irinnews.org/Report/95272/KENYA-Overcoming-cultural-obstacles-to-girls-education-in-Dadaab

・国連UNHCR協会HP : http://www.japanforunhcr.org/

・難民を助ける会HP : http://www.aarjapan.gr.jp/

 


 

文責:立花香澄